2022年5月13日に経済産業省から発表された人材版伊藤レポート2.0。
その中で示されている『3つの視点・5つの共通要素』は、人的資本経営やその開示において、注目すべき事項と言えます。
これらについて、確認してみましょう。
3つの視点(Perspectives)
1.経営戦略と人材戦略を連動させるための取組
①CHROの設置
②全社的経営課題の抽出
③KPIの設定、背景・理由の説明
④人事と事業の両部門の役割分担の検証、人事部門のケイパビリティ向上
⑤サクセッションプランの具体的プログラム化
(ア)20・30代からの経営人材選抜、グローバル水準のリーダーシップ開発
(イ)候補者リストには経営者の経験を持つ者を含める
⑥指名委員会委員長への社外取締役の登用
⑦役員報酬への人材に関するKPIの反映
2.「As is - To beギャップ」の定量把握のための取組
①人事情報基盤の整備
②動的な人材ポートフォリオ計画を踏まえた目標や達成までの期間の設定
③定量把握する項目の一覧化
3.企業文化への定着のための取組
①企業理念、企業の存在意義、企業文化の定義
②社員の具体的な行動や姿勢への紐付け
③CEO・CHROと社員の対話の場の設定
5つの共通要素(Common Factors)
1.動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用
①将来の事業構想を踏まえた中期的な人材ポートフォリオのギャップ分析
②ギャップを踏まえた、平時からの人材の再配置、外部からの獲得
③学生の採用・選考戦略の開示
④博士人材等の専門人材の積極的な採用
2.知・経験のダイバーシティ&インクルージョンのための取組
①キャリア採用や外国人の比率・定着・能力発揮のモニタリング
②課長やマネージャーによるマネジメント方針の共有
3.リスキル・学び直しのための取組
①組織として不足しているスキル・専門性の特定
②社内外からのキーパーソンの登用、当該キーパーソンによる社内でのスキル伝播
③リスキルと処遇や報酬の連動
④社外での学習機会の戦略的提供(サバティカル休暇、留学等)
⑤社内起業・出向起業等の支援
4.社員エンゲージメントを高めるための取組
①社員のエンゲージメントレベルの把握
②エンゲージメントレベルに応じたストレッチアサインメント
③社内のできるだけ広いポジションの公募制化
④副業・兼業等の多様な働き方の推進
⑤健康経営への投資とWell-beingの視点の取り込み
5.時間や場所にとらわれない働き方を進めるための取組
①リモートワークを円滑化するための、業務のデジタル化の推進
人的資本開示のポイント
これらを見ると、人的資本開示で求められているのは、例えば女性管理職の割合や中途採用者の割合と言った現状の事実ではなく、経営や人材の戦略や施策への言及が多い点が特徴的です。
今後の対応としては、経営戦略と人材戦略の連動、As is-To beギャップの定量把握、人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化の醸成・定着につながる活動が求められていると言えます。